【砂漠の星に見る夢】

ヘレスが部屋から出て行ったあと、マヤはイシスの横に立ち、


「太陽信仰が動き出しているというイヤな噂を聞きました。ピラミッドも完成してしまった今、ヘムオン様の御身が心配です」


と小声で告げたその言葉に、イシスは息を呑んだ。


そうだ、ピラミッドが完成した今、ヘムオンは太陽信仰にとって邪魔な存在でしかなくなった。


今日の完成式での民衆の反応も、太陽信仰を大きく刺激しただろう。


ヘムオン……。


イシスは眉をひそめたあと、ヘムオンとの約束を思い出し、ハッとして顔を上げた。


「マヤ、私、ちょっと外の風に当たってくるわね」


そう言ったイシスに、マヤは戸惑いながらも、「あっ、はい」と頷いた。


イシスは頭からショールを巻きつけて顔を隠し、裏庭につながれている白馬に跨って、オシリスの教会へと向かった。


途中、賑やかなメンフィスの町に差し掛かり、イシスは手綱を持つ手を緩めた。



メンフィスの町はピラミッド完成で皆浮かれた様子だった。


そんな活気のある町の様子を見て、まるで昔に戻ったようだ、と笑みを浮かべながら町を駆け抜けた。


町外れの古井戸に着いたイシスは、馬の手綱を木の幹に縛り付けた。


ここに来るのも、久しぶりね。
< 256 / 280 >

この作品をシェア

pagetop