【砂漠の星に見る夢】

首都メンフィスは町の中央に『メンフィス広場』と呼ばれる大きな円形の広場があり、そこから放射状に道が広がり分かれていた。北に進むと王室の宮殿に辿り着き、東は神殿、西と南が住宅街だ。


イシスは宅街から『メンフィス広場』に出て、北道の先に見える光り輝く王宮を眺め眩しさに目を細める。


エジプト宮殿は一見神殿のような佇まいを見せているが神殿にはない絢爛豪華な様がエジプトの豊かさを象徴していた。


白い塔門には惜しげもなく黄金が使われ、建ち並ぶ石柱には精巧な彫刻が施され、宮殿そのものが巨大な美術品といえるだろう。


そんな美しい宮殿の前には神々の石像が並ぶ大きな広場があり、そこを皆は『神々の広場』と呼んでいた。


『神々の広場』は神聖な雰囲気を醸し出すとても美しい広場だが、イシスが常日頃利用する『メンフィス広場』は同じ広場でも雰囲気は打って変わり、いつも庶民の活気で溢れている。


中央には『プタハ神(メンフィスの創造神)』の像があり、その周りには白い布を張った店舗がひしめき合い賑やかな掛け声と共に珍しい果物や魚や肉を売買していた。



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