【砂漠の星に見る夢】


いつも活気に満ち溢れるメンフィスの町だが、今日は特に王子の帰国とあってか人出もより多く賑やかさは倍増していた。


『祝・ネフェル王子帰国』という看板もあちらこちらに見受けられ、『お帰りなさいませ』という文字が書かれた黄色い飛行船が空を飛んでいる。


飛行船を眺めながら、浮かれすぎはどうかと思うけど町に活気が出るのはいいことね、と頷きつつイシスはメンフィス広場から南道を歩き、ナイル川を目指した。


大きく美しいナイル川は、遠くからでも水面が輝いているのが見て取れる。


やがてナイル川ほとりに着き、オリーブの木が密集する木陰に入りこみ、草の上に籠を置いたあと、ゆっくり体を伸ばす。


ここは静かで人気がないお気に入りの場所だった。


イシスは「よし」と奮起して、せっせと洗濯を始める。





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