【砂漠の星に見る夢】

なんだ、まだ来てないのね。


女を待たせるなんて、さすがは王子様だこと。


拍子抜けしてその場に腰をかけ、ボーっと頬杖をついていると、川上から頭から白いフードをかぶった男が近付いて来る姿が目に入り、イシスは警戒しながら身を起こす。


「待たせたかな」


そう言って男はフードを取り、その美しい金髪をあらわにした。


「ネフェル、その格好はどうしたの?」


「目立ちたくなかったから、目くらましだよ」


と言って、またフードをすっぽりかぶり「こうしたなら、ただの旅人だろ?」と得意気にイシスを見た。


「そうかしら?」


「今日は君に付き合ってもらいたい所があるんだ」


「どこに?」


「メンフィス広場だよ」


ネフェルはためらいもせずにイシスの手を引き、『メンフィス広場』に向かって歩き出した。


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