【砂漠の星に見る夢】
広場はいつものように賑やかで人で溢れていたが頭から白いフードをかぶった男をネフェルと気付く者はいなかった。
だが、隣のイシスの美しさは道行く者の目を引き、すれ違う者たちを振り向かせる。
「すごいなぁ、イシスを見ては男も女も振り返る」
感心したように漏らすネフェルに、イシスは肩をすくめる。
「あなたがそのフードを取ったなら老若男女が振り返るわよ」
「それじゃあ、取ってみようかな」
「た、大変なことになるわよ」
ムキになって声を上げるイシスに、ネフェルは楽しそうに笑った。
やがて広場の掲示板の前で足を止め、「ちょっと待って」と言って胸元から紙を取り出して、張り付ける。
『さあ、みんなでファラオのピラミッド造ろう! 短期労働者募集! 高収入、昼食つき、時間・休み応相談。期間、三か月程度。希望者は○日の午後、宮殿裏手の広場まで』
「ピラミッドの募集広告を貼りに来たの? 三か月程度ってそんな短期間で大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だよ」
……普通、王子様が自ら広告を作って貼ったりしないわよね?
そう思いつつ広告を眺めていると、ネフェルは「行こうか、次はこっち」とイシスの手を引いて歩き出した。