【砂漠の星に見る夢】

「でも、提唱したのは真実なんでしょう?それが悪いことなの?」


ためらいがちに訊ねるイシスに、ネフェルは目を伏せた。


「太陽がなくなればこの星の住民は生きてはいけない。だから『神』でもあるんだよ。オシリスはそんな太陽を崇め、感謝している者たちの心を踏みにじるような真似をしたんだ」


ネフェルは重い息をつき、大きなモニターに目を向ける。


そうだったんだ……それが発端なんだ。


それから政治や権力が複雑に絡み合い、今の状態になったんだ。


「それじゃあ、オシリスは神の存在を信じていないの?」


思い立ったように顔を上げたイシスに、ネフェルは微笑んだ。


「信じているよ。科学を極めれば極めるほど、神の所業としか言いようのない奇跡を目の当たりにする。運命や因果や奇跡はすべて神の司るところだと思っているし」


ネフェルはそう呟き、胸元から紙を取り出して、デスクの上の光に乗せている。


「――何しているの?」


「僕が書いた設計書を機械に読み取らせているんだ」


機械が『ピピッ』と音を立てたことを確認し、「よし、これで完了」と頷く。


「オシリスってすごいのね……。学者の集まりですものね」


とイシスが呆然と呟いていると、


「本当は『オシリス』以外の人間をここに招き入れてはいけないんだ」


とネフェルは明るい口調でそう告げる。


「えっ?大丈夫?怒られないかしら?」


慌ててキョロキョロと室内を見回すイシスに、ネフェルは頬を緩ませる。
< 82 / 280 >

この作品をシェア

pagetop