【砂漠の星に見る夢】
激しく鼓動が打ち鳴らす中、
「そ、それで? 見つかったの?」
それでも、平静を装ってみせる。
「いや、見付からなかった。
世界中を見て回って確かに美しい女性も優しい女性もたくさんいた。でもこの人だと思える人には出会えなかったんだ。そうして父との約束の二年がきてしまい落胆して帰ってきたときにナイルの川岸で君と出会ったんだ。
驚いたよ。世界中を回っても出会えなかった人に、生まれ育った祖国で出会えたんだから」
目を輝かせながら強い口調でそう告げたネフェルに、イシスは虚を衝かれたように瞬く。
「な、何をいっているのよ。私はたくさんの妻をはべらかす王室に嫁に行くなんてごめんだわ。私はたとえ貧しくても私だけを愛してくれる人のところに嫁ぎたいの」
イシスは動揺を隠すようにネフェルに背を向けた。
「同感だよ」
「えっ?」
「僕も妻になる人はたった一人でいいと思っている。たった一人の最高の女性と結婚したいからこそ、探し続けたんだ。そして君を見つけた」
ネフェルはイシスの髪にそっと手を触れた。
「イシス、君は最高に美しく強く眩しいばかりに輝いている」
「お、お生憎様、私は外見だけを好んで近づく男なんてごめんだわ」
心とは裏腹、不安を表すように憎まれ口が出る。
口では強がっていたが、本当は鼓動の強さに目眩を感じていた。