【砂漠の星に見る夢】

 「イシス、僕は美貌というものは大きな武器だと思っている。
特に『絶世の美女』は歴史をも変える力を持っているんだ。力を持っている者に惹き付けられる。それに美しいだけの人になら、たくさん出会ったよ、君に惹かれるのは理屈じゃないんだ」


そう言って熱い眼差しを送るネフェルに、イシスは頬がさらに熱くなる。


「そ、そんな衝動でプロポーズされても信じられないわ。また理屈じゃなく惹きつけられる人に出会ったら、その人も妻にするんでしょう?」


もはや動揺を隠せず目を泳がせながらそう告げると、ネフェルはそんなイシスの手を引き、強く抱き寄せた。


「その、うるさい口を閉ざそうか?」


「なんて強引なの? 簡単にそんなことをできる男は信用できないわ」


「無礼な行為に懐の短剣を使って制裁を加えられても構わないよ」


ネフェルはそう言ってイシスの頬に手を触れ、優しくキスを落とした。


減らず口を叩き続けたイシスも、ネフェルの腕の中でまるで氷が氷解するように彼の行為に身を委ねた。


ネフェルはゆっくり唇を離した後、目をそらさずにイシスを見つめる。


「三ヵ月後に宮殿で僕の誕生日パーティーが開かれるんだ。そこで、君を父に僕の婚約者として紹介するよ。そしてすぐに結婚式を挙げよう」


イシスはただ驚き目を開くばかりで、何も言うことができない。


バクバクと胸が高鳴り、紅潮する頬の熱に目眩を感じながらネフェルを見ていた。



< 85 / 280 >

この作品をシェア

pagetop