【砂漠の星に見る夢】

「そして結婚したら一緒に世界を旅しよう」


と、とびきり笑顔を見せたネフェルに、「せ、世界?」イシスは話が進んでいることに目を丸くする。


「そう、僕はいずれファラオとなる。その前に色々な国や街を見て良いところを学び、悪い面を教訓としたいんだ。この国を誰もが誇りに思うような、そんな国にしたいんだ。貧富の差はなく、皆生き生きと生活できる豊かで明るい平和な国を君と共に創りたいんだ」


彼の口から出る今まで考えたこともない壮大な話しにイシスは圧倒されながらも、落ち着きを取り戻すように深呼吸をし、ようやくしっかりとした眼差しをネフェルに向けた。


「……素敵な話ね」


笑顔を見せると、ネフェルは「良かった」と安堵の表情で、胸に手を当てる。


「でも誕生日までは三ヶ月あるわ。その間、あなたがどんな人なのか、しっかりと見極めさせてもらうわね」


そう言って強い眼差しを見せたイシスに、ネフェルは楽しげに笑った。


「流石、僕が選んだ人は一筋縄ではいかないね」


イシスは「もちろんよ」と胸を張った後チラリとネフェルを見て、


「でも、あなたの語ったその未来、もし実現したら夢のようだと思うわ」


とボソボソと小声で呟く。


その言葉を耳にしたネフェルは、「嬉しいよ、イシス」とイシスに抱きついた。


「やだ、もう」


照れたように笑うイシスに、ネフェルはまたキスをし、蒼い瞳を見つめた。


「なんて美しい瞳なんだ。神秘的なほどに綺麗な瞳だね」


「それはあなたもよ、ネフェル。とても綺麗」


二人は見つめ合い、微笑み合って、また小さくキスをした。




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