【砂漠の星に見る夢】
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そこまで老人から話を聞き、ウットリと目を細めた。


「素敵。美形の王子様と、美しい町娘のラブロマンスなんて」


夢見心地でそう漏らした私の横で、


「でも、16歳で結婚なんて早いんだね」


と雄太が照れたように頭をかいている。


「ええ、昔は婚姻も早く、その分精神年齢も高かったと思われます。
ですが果てしなく純粋でもありました。そして文明が発達していようと、当然のように結婚まで純潔を守っていた時代でした」


「それで、ネフェル王子とイシスはすぐ結婚するんですか?」


身を乗り出しすと、老人は切なげに目を伏せた。


「……ネフェルとイシスが二人だけの約束を交し合ったあと、すぐにピラミッド建造が開始されることになりました。ネフェルが募集した人材は宮殿の裏に予想以上に集まりました。
そして、その場にはイシスも訪れていたのです」


老人はそういった後、「この時、宮殿の裏にイシスが現れなければ時代は大きく変わったものと思われます」と残念そうに息をつく。


「――えっ?」


私たちは、ごくりと息を呑んだ。



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