彼氏くんと彼女さんの事情
「あの…、テストの問題を解いてるときにね、テスト前に高貴に教えてもらった公式を、思い出そうとしたんだけど……」
チラリと横目で高貴の表情を窺いながら話を進める。
「教えてもらった所を思い出そうとすると、何故か、
高貴が私に勉強を教えてくれる姿ばっかりが頭に浮かんで…、」
私の声が小さくなるにつれて、高貴が呆れた表情になっていくのが窺える。
「……思い出に浸ってたら、いつの間にかテストが終わっていました……。」
最後まで言い終えると、高貴は大きな溜め息をつき、答案用紙を私の目の前へ突き出した。
「…だからって何だこの答えは」
目の前に突き出された私の数学の答案用紙には、大問1以外の全ての解答欄が『萩峰高貴』という文字で埋め尽くされていた。
漢字が苦手な私だが、彼氏の名前は完璧だ。
って、そうゆう問題じゃないか。
「それは、無意識です…」
「……はぁ」
「(溜め息2回目…。)」
でも、高貴の呆れた顔もかっこいい…
「今何か不謹慎なこと考えただろ」
「!いえっ」
す、鋭い。
「馬鹿」
高貴は溜め息混じりの声で呟くと、フイと私に背を向けて歩き出した。
「ご、ごめんなさい…待ってー!」
しかし私の声を無視して教室を出ていってしまった。私は慌てて高貴を追い掛ける。
高貴、私の馬鹿さ加減に失望しちゃったかな…