ピアス
 それから数十分間、クリフは箸の扱いと格闘した。
 
 
 その間には味噌汁は冷め。漬物は張りを無くした。




 が、クリフはそんなのも意に返さず食べた。多少なりとも箸のコツを掴んだのか、最初の頃よりは比較的、スムーズに箸を扱えるようになった。


 

 「飲み込みが早いのね。それに箸の使い方を忘れてるだけかもしれないけど、日本国の人じゃないみたいねクリフは」と柚菜は言った。



「だろうな」


「だろうな、って結構どうでもいい感じだね」と柚菜は言い、「年齢も私と変わらないくらいだけど何歳なんだろう」と首を傾げた。



「柚菜は何歳なんだ?」彼ははじめて彼女を名前で呼んだ。
 それが新鮮だったのか、はたまた名前を呼ばれるのが不思議なのか、柚菜は顔を赤らめた。

「ええと。十八歳」柚菜は簡潔に言う。


「じゃあ、それでいい。たぶん十八ぐらいだと思う」
 クリスは答えた。


「凄い気になってるんだけど、耳につけてる装飾品は何?」

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