愛恋歌-tinkle tone-
それから数十メートル先で私は急ぐ足を止めた。
ここを抜ければ駅に着く。
さっき通った公園…
白い仔犬…
あの子はどうしているのだろう。
この雨の中びしょ濡れになって震えているのかな…
「助けて」と鳴いているのかな
私の足は自然と公園の中へと向かっていた。
たくさんの水溜まりができた広場。
砂場に忘れられていたスコップは雨に打たれさらに寂しそうにしている。
ザーザーと叩きつける雨の音が耳を刺激するのを感じながら辺りを見渡した。
「あ……」
塗装が剥げかけたベンチに白い仔犬の姿が見えた。
ギュッと胸に抱き締められパーカーの間から小さな耳が覗いている。
フードを被ったその人はうつ向き、その顔を確認することはできない。
だけど…
雨にびしょ濡れになって仔犬を守る姿はすごく綺麗だった。