似非恋愛 +えせらぶ+
「ちょ、ちょっと待ってよ、なんで斗真まで……きゃっ」
突然斗真が私を抱きかかえたので、バランスを崩してソファに倒れ込んだ。
「良いだろ? 由宇にも久しぶりに会いたいし」
「ちょっと、放して……っ」
「良いって言うまで放さない」
突然子どもみたいなことを言い出す斗真に、私はほとほと困り果てる。それに、この体制は恥ずかしい。
「斗真、放してよ。由宇に行くって言っちゃったんだから」
「俺も、いいだろ?」
じっと私を見つめる斗真に、私はすぐにでも降参したくなる。
別に、斗真と由宇が会うことが嫌なわけじゃない。そこまで私の心は狭くない。
今の私と斗真の、複雑な偽物の恋愛関係の状態で、幼いころの綺麗な思い出を穢したくなかった。
今の私が斗真と一緒に、地元に戻れば、あの頃の綺麗な思い出が上書かれてしまう気がして……。
それが、怖かったのだ。