似非恋愛 +えせらぶ+

 * * *

『香璃ー? 聴いてんの?』

 昔のことを思い出していた私は、由宇の声にはっと我に返った。

「えっ、あ、うん。聴いてる。うーん、今から準備しても午後になるよ」
『帰っておいでよー』
「うん、わかった」

 私は承諾して電話を切った。そして恐る恐る斗真を伺う。一見、斗真の様子に変わりは見られなかった。

「今の電話、由宇?」

 全く動揺の感じられない声で問われ、私は頷く。

「へー。なんて?」

 私は、注意深く斗真の様子を伺う。

「今実家に帰ってきてるから、私も帰って来いって」
「ふーん。じゃ、準備するか」

 そんな私の様子に気づいているのかいないのか、斗真はあっさりとそう言った。

「え?」

 斗真が立ち上がって、眩しい笑顔で笑いかけてくる。

「俺も行く」
「は?」
「久しぶりに、おじさんとおばさんにも挨拶したいし」

 あまりの急展開に、私の思考が追い付かない。
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