似非恋愛 +えせらぶ+

 みあの告白を想いだし、そして彼女の想いを想像しただけで、胸の奥を突き刺されたかのような痛みを覚えた。

「胸が張り裂けそうになりました。氷水を頭からかけられたような感覚でしたよ。動悸がして、目の前が真っ暗になりました。
 俺は、いったい何をしてしまったのかと、みあの涙にも気づかず……みあを好きという気持ちに蓋をして、当時の恋人のことも裏切って。
 一気に目が覚めました。そして、酷く後悔しました」
「……それで、どうしたの?」
「その足で、当時の恋人のところに行きました」

 氷田君の表情が険しくなる。

「……8年、付き合っていたんです」
「8年……っ!?」

 想定以上の年月に、私は目を剥いた。

「それは……」

 私と真治が付き合っていた年月よりも、倍以上長い。それを、遠距離恋愛で待っていた彼女……。

「もう、謝るしかないです。全部さらけ出して、何もかも説明して、別れました。まあ、でも、女性って何歩も先を行ってるんですね。元カノは、俺の心変わりも気づいていたみたいで……ほんと、馬鹿でした」
「……そうなの」

 8年も付き合っていた恋人が、遠距離恋愛で他の女にうつつを抜かして、そして他の女のことを好きになってしまうなんて……想像もしたくない。

「それから、大学の同期でみあの親友にずっとみあのことを訊いていました。彼女がまた曲者で、全然教えてくれないわけですよ……そんなふうに、あっという間に5年経っていました」

 彼は、回り道をした。
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