似非恋愛 +えせらぶ+

「馬鹿ね……」

 そんなに、自分を責めなくてもいいのに……。

「知っています」

 氷田君は笑った。

「……みあは、幸せものね」
「みあは幸せにならなくちゃいけないんです。彼女を幸せにするのが、俺じゃなくてもいい。彼女の隣にいるのは、俺じゃなくてもいい。ただ、彼女は幸せにならなくちゃいけないんです」

 そう語る彼が、年下の彼が、酷く大人びて見えた。

「罪滅ぼしとかではないんです。俺は、ただみあのことが好きだからそばにいるんです。もちろん、初めから諦めているわけじゃなくて、もしチャンスがあればって思っていますし、みあの心が俺のものになるように善処はします。俺も男ですからね」

 少し照れたように言う氷田君が可愛く見える。本当に、素直な良い子だ。
 若さゆえの失敗を悔い改め、今、誠実であろうとしている。少し、重すぎる罰を自分に与えているようにも見えるけれど、納得ずくであるなら他人の私がどうこう言える立場ではない。

「でもね、みあが別の男を選んだら、その時は潔く身を引きます。仕方が……ないことですから。決めるのは、みあなんです」

 氷田君の話を聞いていたら、無性に斗真に会いたくなった。


 由宇のことが好きだった斗真は、今の氷田君みたいに思っているのだろうか。
 なんとなく、そんなことが気になった。
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