似非恋愛 +えせらぶ+

 * * *

 私は、物件を探しに不動産屋へ足を運んでいた。

 真治と一緒に暮らしていた部屋にいるのは、やっぱり変なプライドに囚われているような気がしたからだ。
 それに、布団は処分したとはいえ、他の女と寝たかもしれないベッドを使い続けるのも嫌だったし、あの部屋は広すぎる。

 引っ越しをして、心機一転頑張るのもいいかと思ったのだ。

「……もしかして、篠塚さん……?」
「え?」

 条件を伝えて、担当の人がパソコンに向かっているときに、突然別のスタッフに声をかけられた。

「やっぱり、篠塚さんだよね?」

 声をかけてきたのは、黒縁メガネをかけた黒髪の男性だった。向こうは私のことを知っているみたいだけど、私はとっさに誰かがわからない。

「ごめん、俺だよ、小城雅孝(おぎまさたか)。大学でサークル一緒だった」
「……えっ!? 小城君!?」

 私は記憶を辿るけど、目の前の人物が、覚えている小城君と一致しない。大学時代、ボランティアサークルに入っていたんだけど、そこにはたしかに小城君という子がいた。

 いたんだけど……。

「いや……確かに見た目相当変わったんだけど、その反応はちょっと寂しい」

 小城君は困ったように苦笑した。
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