似非恋愛 +えせらぶ+
『いや、香璃が大丈夫なら……うちくるか?』
そんな私の葛藤もよそに、斗真が私を甘やかす言葉を告げる。
「え、でも……大丈夫なの?」
『ああ。なんだったら、荷物持ってきてもいいぞ』
斗真の言葉に、私は一瞬言葉を失う。
その言葉の意味するところは、私には一つしか考えつかなかった。
「……それって、泊まっていいってこと?」
『そっちのが、楽だろ』
私はしばらく、二の句を紡げなかった。心の奥に小さな火花が散ったような、奇妙な感覚に襲われる。
果たしてそれは、甘美な期待か、はたまたさらに深まった罪悪感か――。
「いえ、泊まらない。そこまで迷惑はかけられないもの。少しの間でいいから、一緒にいてほしいの」
迷惑はかけられない、そんなの体のいい断り文句だ。すでにこんなに迷惑をかけているというのに。
それでも、私はブレーキをかけていたに違いない。