似非恋愛 +えせらぶ+

『なっ……』
「香璃が迷惑がってる。じゃあ」

 私は目を丸くして斗真を見ていた。そして、電話を返してくる斗真に、思わず笑ってしまった。

「ふふっ」

 笑ったとたんに、涙がこぼれた。

「……ありがとう」

 斗真が私の頭をなでる。私は、斗真の首に縋りついて泣いた。

 その間ずっと、斗真は私を優しく見守っていてくれていた。

 * * *

 しばらく泣いた後、私は斗真から離れて涙をぬぐった。

「ごめんね、私、斗真の前で泣いてばっかり……」
「香璃、お前、俺に謝ってばっかりだな」
< 40 / 243 >

この作品をシェア

pagetop