赤い月
徐々に高度を上げる彼女の躰。
指先が、頬を撫でるようにして離れていく。
左手は彼女に触れられぬまま。
右手に握ったバジュラを右足に添えたまま。
俯き、前髪で表情を隠したまま、景時は低く呟いた。
「…だーかーらぁ、逃がさねーって。」
「?!」
「あああぁぁぁっっっ」
景時は手首だけを動かし、バジュラの尖端を自らの腿に突き刺した。
血が飛び散り、痛みと共に躰の支配権が戻る。
間髪入れず目の前に浮かぶ細い足首をひっ掴み、驚き、不意をつかれた彼女を引きずり降ろして、横抱きに腕の中に収めた。
「よっしゃあぁぁ!
てか、いってぇぇぇ!」