赤い月

景時は彼女の肩に頭を擦りつけるように首を左右に振り、さらに腕の力を強めた。


「いーやーだー
誰が放すか。
両腕もぎとられても、脚で絡みついてやる。
逃がさねぇって、言ってンじゃん。」


「童のような事を言うでない。
目を醒ませ。
妾と共にあっても、苦しむのはそなたじゃ。」


「…あのね?
そりゃ俺も色々考えたワケ。
いつか、一緒に年をとっていけない事に打ち拉がれんのカナとか、いつか、君の爪を怖れて眠れない夜が来るのカナとか。
君が言うように、ネガティブポイントは満載だし、ね。
でもさー…
確定じゃない『いつか』ばっか気にして、今、心を圧し殺したら…
きっと『いつか』の心も、死んだまま朽ち果ててンだよ。」

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