焼け木杭に火はつくか?
「ひどいっ 言ったよっ オレ。親友なのに、忘れるなんてひどいよっ」
「お前な。それはこっちのセリフだっ 絶対に、俺は何も聞いてない。親友だろっ 黙ってるなんて、酷いくね?」
「言ったっ 言ったよ、言ったもん」
「聞いてない。聞いてないもんは、聞いてない」

むぅっと、顔を付き合わせるように睨み合う英吾と良太郎の頭を、夏海の平手がパシパシとテンポよく叩いていった。

「うるさい」

いつまでも子どもみたいなケンカしてんじゃないわよ。呆れ顔で2人を睨みつける夏海に、英吾と良太郎は叩かれた後頭部を摩りながら、拗ねたように唇を尖らせた。

「英吾。いつ良太郎に話したんだよ?」

カウンターの中から聡が尋ねる。漂い始めて匂いに、英吾は鼻をひくつかせながら、顔を綻ばせた。

「あのね。幼稚園のとき」
「はぁっ?!」

聡の問いかけに対する英吾の答えに、良太郎は顎が外れそうなくらい、口をだらしなくあけ、見たことも無い生き物を見るような目で英吾を見た。
その言葉には、さすがに夏海と聡も目を座らせて英吾を見つめるしかなかった。
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