焼け木杭に火はつくか?
「よ、幼稚園だあ?!」

目を剥く良太郎に英吾は胸を張ってそうだよと頷いた。

「言ったじゃん。オレ、大人になったら秋ちゃんと結婚するから、良ちゃんは、秋ちゃん好きになっちゃダメだよって。良ちゃん、判ったって指きりしてくれたじゃん。で、結婚する前に、まずは『お付き合い』っていうのしないとダメなんだぜって、良ちゃんが教えてくれたんだよ。だから、じゃあ、中学生になったらお付き合いするって。オレ、良ちゃんにちゃんと言ったもん。なんで、忘れちゃうんだよ」

開いた口が塞がらない。
その例えを今使わず、いったいいつ使うのかという顔で、良太郎は英吾を見つめた。
聡はカウタンーの中で笑い崩れ、夏海までもがカウンターに突っ伏し肩を震わせていた。

「あーのなー。そんな子どもの頃のこと、いつまでも覚えているわけねえだろっ」

地を這うような抑揚の無い良太郎の声に、英吾は頬を膨らませて「ひどい」と抗議すると、また菓子を食べ始めた。
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