君の声が響き渡る中で
episode01.16歳.新生活
小さな彼
episode01…16歳 新生活
《小さな彼》
あの頃の私は、弱かった。
「社長!」
秘書の声でハッと目を覚ます。
「あ‥‥どうしたの‥?」
周りがまだはっきりと見えない。曇りガラスが目の前にある感じ。
「前の件で‥A社の社長が‥」
ここU.S.A、ニューヨーク。
全てが終わった25才。
日本に帰国する気もなく、ニューヨークに留まる毎日。
「わかったわ、今行きます」
書類を手にして、私は重いドアを開けた。いつもこの扉は私を閉じ込めている。
15才、夏の初め。
夏休みの予備校帰り。
雨が振ったせいか、いつもより服が湿っぽい。階段もなぜか多く感じた。
上り終えた私。駅に向かおうとすると、ギターの音が聞こえてきた。
小さな中学生ぐらいの男の子の小さなライブだった。
高校1年生。二度とするまいと誓った恋だった。