君の声が響き渡る中で
「ねえ、あんた中学生?」
1週間後、彼はまた同じ場所でライブをやった。
「そうですけど…」
彼はギターをケースにしまう手をとめ、私を見上げてきた。目が大きい、犬みたいな目をしてるな。
「…いつも金曜日にやってるの?」
しゃがみ込み彼と視線を合わる。
「……あと土曜日です」
「嘘!?こないだいなかったよ?」
彼はふと考え込み、笑って、熱が出ちゃったと言う。まるで小さな子供のような笑顔の持ち主だった。ギターをそっとケースに入れると下向き加減で話しかけてきた。何かを思いついたように。
「あのさ、前にこのピアス入れてった人だよね…?」
どこから出てきたか、彼はそれを私の顔の近くまで持ってきた。白いストーンが眩しく光っている。
「………それ、お金の代わりに入れたやつ」
彼は、不思議そうに眉を曲げた。
「いらないの?」
白いストーンの光るそれは、入れた時よりもキラキラと光っていた。まるで自立した人間のように逞しく光っていた。
「……うん、あげるよ」
にっこりと私は微笑むと、彼は名残おしそうに私を見つめる。
「…ありがとう」
それを見つめながら、彼は呟いた。そして、お金がじゃらじゃら入った箱を開けピアスを入れた。全て百円玉。みんな銀色。埋もれる中に一つだけ白。
15才。東京に戻ってきて3ヶ月。
久しぶりに、カラフルな毎日を感じている私がいた。