紺碧の海 金色の砂漠
セルリアン島は王国内のほぼ中央に位置する島だった。

本島やアジュール島近くの海より、少し碧の掛かった優しいセルリアンブルーの海。きめの細かいサラサラの砂浜と合わせて、観光客に人気の島だという。

そしてこの国立リゾート・スパは全室スイート仕様で、さらに、ヴィラがあった。

上流階級を意識して、すべてのヴィラにバトラーが置かれている。滞在中、客は主人となり『旦那様』『奥様』と呼ばれる。ほとんどのことをバトラーに頼むようになっていて、命令されなくても、主人が過ごしやすいよう配慮するのが仕事らしい。

このバトラーは男性が多い。だが、女性だけで過ごす場合、女性バトラーを希望されることもあるためクロエの他にふたりの女性バトラーがいるという。
 


「この度、ミシュアル国王陛下、アーイシャ妃殿下のご滞在に合わせまして、全室貸切になっております。妃殿下がどちらに行かれましても、館内はすべて女性の従業員のみでございますので、ご安心下さいませ。この下に見えますプライベートビーチも同様でございます」


クロエはにっこり笑って、綺麗な日本語で答えてくれた。

一番人気の島の国立リゾートを貸切なんて……相変わらず、ミシュアル国王のやることは桁違いだ。多分、舞の“憧れのビーチサイド物語”を叶えようとしてくれたのだろう。


「あ、あの……陛下はどちらに?」

「はい。プライベートビーチに向かわれました」


舞は大きめの窓からビーチに目をやる。

人影は見えないが、木でできた階段を見つけ……舞はヴィラを飛び出した。  
 
 
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