紺碧の海 金色の砂漠

(20)情熱は嵐のあとで

(20)情熱は嵐のあとで



観光用パンフレットの宣伝文句に載っていそうな、本物の白いサラサラの砂浜に舞は足を下ろした。ビーチサンダルを履いているので足の裏は熱くない。

広いビーチでどうやってミシュアル国王を探そう、と悩んでいたが杞憂に終わった。

 
白い砂浜のほぼ中央、海を睨むようにミシュアル国王が立っていた。

それも随分久しぶりに見た、真っ白のトーブ姿である。同じく白のグトラを被り、黒のイガールで留めていた。

トーブが潮風にはためく。その姿は“砂浜に立つシーク”とでもタイトルがつきそうな、不思議な光景だった。
 

舞は生成りのワンピース姿だ。

他には……なんとショーツ一枚しか身につけていない。ノーブラで素足にサンダルなんて、クアルンの歴史上、ありえないほどラフな格好の王妃かも知れない。


「えっと……アルーッ!」

 
ちょっと離れた距離で舞はミシュアル国王に向かって手を振った。

勢いをつけたまま彼に駆け寄るが、舞は抱きついていいのかどうか直前で悩む。

次の瞬間――ミシュアル国王の手が舞のウエストを捉えた。そのまま一気に抱き上げ、ギュッと抱き締める。


「舞……私に昨夜と同じキスを」

「で、でも、人前でしたらダメなんじゃ」

「ここはアズウォルド。そんな法律はない。それに、誰も見てはおらぬ」


浜辺でキスなんて、ロマンス映画みたい! 


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