紺碧の海 金色の砂漠
その声に舞はギクリとした。

彼女を決して正妃と認めようとしない、側近ダーウードだ。

今すぐ入ってこられたら、ダーウードの前にあられもない姿を晒してしまう。すぐにも飛び起きなきゃ、という場面のはずなのに……。

ミシュアル国王にはその気配が全然ない! 


ドアが音を立て、ダーウードが入って来ようとしたそのとき――


『誰が入ってよいと言った!? このヴィラは後宮と同様である。無断で立ち入った男は生かして帰さん!』


悲鳴を上げかけた舞の口を大きな手で塞ぎ、“最中”の体勢のまま動きを止めて一喝する。

隆起した筋肉が激しい呼吸に上下していた。オリーブ色の肌に汗が伝い光って見える。ミシュアル国王の止め処ない熱情に翻弄されながら……


(カッコいいなぁ……ってこんな格好だけど)


カウチの上で組み伏せられ、その荒々しさに舞はドキドキだ。
 

(定時連絡くらい待たせてもいいんじゃない?)


そう思ったことを後悔するような問題が起きているとも知らず。

ダーウードが今ひとつ苦手な舞は、夫の与えてくれる悦びに、しばし身を委ねたのだった。


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