紺碧の海 金色の砂漠
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翌朝、舞をセルリアン島のヴィラに残し、ミシュアルはアズウォルド本島の王宮に戻った。もちろん、ダーウードも一緒だ。


『レイ、このたびは貴国の協力に感謝する』

 
王宮正殿の国王執務室に入るなり、ミシュアルはレイに対して感謝を口にした。

一方レイは、柔らかい物腰と動作でミシュアルに着席を勧める。


『感謝には及ばないよ。予定どおりと言うべきだろう。……違うのかい?』
 

レイの問い掛けに何と答えればよいのか、ミシュアル自身にもよくわからない。

彼は曖昧な笑みを口の端に乗せながら、『神のみぞ知る《インシャーアッラー》、だ』そう小さく答えた。 


そこに、電話の音が鳴り響いた。

レイが受話器を取り上げ、英語に近いアズウォルドの言葉で軽く受け答えをする。


『シーク・ミシュアル、日本からの不法入国者が君の名を口にしているというが……』


受話器を手にしたまま、彼はミシュアルに向き直り尋ねた。


『不法、入国だと?』

『――サンドベージュの髪にブルーアイズ、米国人でアライブ・キャラハンと名乗る青年だ。心当たりは?』

『ある。連れて来てくれ』


キャラハンは母方の姓だったと記憶している。英語のアライブとはアラビア語でヤイーシュを意味した。


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