紺碧の海 金色の砂漠
だが、今のところ新国王の評判は上々だ。国民に絶大な支持を受けており、暴動は対岸の火事で済むと考えていた。


ただひとつ懸念される問題といえば、やはり新王妃である舞の存在だろう。

案の定、日本人王妃反対を唱え、暴動が計画されたのである。その首謀者が反日組織と判明し、暴動は火種のうちに制圧された。その先頭に立ったのがリドワーン王子だった。


リドワーン・ビン・ワッハーブ、現在三十一歳で前国王の最年長の孫である。

第一夫人ファーティマ妃との間に儲けた王女は十七歳で遠縁の王族に嫁ぎ、一男二女を産む。彼は王子の称号を持ち、父系では嫡流から外れるものの、母系ではラシードに次いで正統な血を受け継いでいた。

ファーティマ妃は第二子の男子を死産し、子供が産めなくなった。リドワーンはそんな彼女にとって失った息子も同然だったのだ。

一方、前国王にとってもリドワーンの誕生は大いなる喜びだった。

ヌール妃と出会う以前、前国王には三人の王妃に五人の娘がいた。四十歳を回っていた彼は息子を儲けることを諦め、第一王女の生んだ孫息子を自身の後継者に、と考えていたくらいだ。

だが、リドワーンが三歳のときにミシュアルが誕生した。

その後、他の王女にも男子が恵まれ、現在、ミシュアルには七人の姪と四人の甥がいる。

リドワーンはその後も周囲の期待を受け成長した。

今回の譲位で大臣やそれに伴うポストも若返りを図り、彼は宗教警察の副長官に任命されたのであった。


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