紺碧の海 金色の砂漠

(19)幾度も愛をささやいて

(19)幾度も愛をささやいて



レイの反応を感じ取った瞬間、我慢できなくなったのはティナのほうであった。着替えたばかりのシャツを彼女自身の手で脱がせる。

彼の言うとおり、妊娠のためじゃないセックスなんて何ヶ月ぶりだろう。純粋に彼を欲しがっている自分に、ティナは驚いていた。

そして、久しぶりに触れたレイの体だった。

無敵の逞しさではないが、均整の取れた見事なボディラインである。適度に泳いでいるせいだろう。規則正しい生活を好むレイなら、きっと十年後もこの体を維持しているに違いない。

ティナも、絶対に手は抜けない、と決意を新たにしつつ……。


「何を焦っているんだい? クリスティーナ」


上から涼やかな声が降ってくる。

顔を上げると、少し湿って黒っぽく見える髪を揺らしながらレイは笑っていた。ランタンの灯りに照らされ、アズルブルーの瞳がきらきら光る。レイは公式の席以外では、ティナを誘うときだけ『クリスティーナ』と呼ぶのだ。

ティナを膝から下ろすと、彼は上半身をはだけたまま、ベッドの中央に横たわった。


「焦らずにすべてを脱いで、ここまでおいで、マイ・スウィート」


悪戯っ子のようにレイはウインクしている。


「それって……私にストリップをしろってことなの、レイ?」

「ストリップかい? それはいいね。ポールがないのが残念だ」


レイの返事にティナは口を尖らせ、


「国王陛下はポールダンスがお好きなのね。みんなに言いふらしちゃおうかしら」

「では、毎夜、王妃が楽しませてくれる、と答えておこう」

「私はそんなことしませんっ!」


背後でクスクス笑いが聞こえていたが、ティナが脱ぎ始めるとピタリとやんだ。


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