愛と欲望の螺旋(仮)
「違う。そこでコネでも掴んでさ、出版社に就職できないかなって。」
「そっちか。でも、黒崎って人、大手っていうか、業界のトップって言われているバーンブルーの人でしょ?出版社のコネとかいっぱい持っていそうじゃん?」
「分かっているけど、交換条件に華組に入れ!!なんて言われてもイヤ。」
だから名刺も貰わなかった。
「てか、あたしのコーヒーは?」
スッと目の前に右手を差し出した。
「あ…忘れた。」
黒崎の出現で、すっかり忘れていた。
「あ~あ、コーヒー飲みたかった。」
泣きそうな顔で口をとがらせた。
「ごめん。今から買ってくるから。」
慌てて席を立とうとした。
「よかったらどうぞ。」
コトッと泉希の間の前に、ミルクコーヒーの缶が置かれた。
泉希と同時に、缶を置いた手の先を見上げた。
黒崎!!
イラッとした私の心とは真逆に。
優しい微笑みを浮かべながら、目の前に立っていた。
「いりません!!」
慌てて缶を手に持つと、黒崎に突き返した。