愛と欲望の螺旋(仮)
きっと、これでどんな手も通用しないって分かったはず。
どこか安心していた。
夕方にはすっかり忘れていて。
最後の仕事を片付けた。
「じゃあ、1年間、お世話になりました。」
総務のみんなに挨拶をして。
「桜ちゃんがいなくなると、寂しくなるね。」
課長がフウッとため息をついた。
「じゃあ、また契約更新頼んでみてください。」
ニッコリと笑った。
「そうだな。何度か掛け合ってみるよ。」
「お願いします。」
軽くおじぎをすると、そのまま会社を出て行った。
はあ。
明日からは、少しのんびりしよう。
コキコキとクビを鳴らしながら、今日で最後になるいつもの駅に向かって歩いていこうとした。
「宝条さん!!」
聞き覚えのある男の声にゾッとして。
恐る恐る、車道を振りかえった。