愛と欲望の螺旋(仮)

「黒崎!!」


引きつる顔。


別に、高級車のアストンマーチンに驚いたわけじゃない。


どうしてここに黒崎がいるの?


また泉希!?


100%そっちに動揺しただけ。


「この先の製薬会社に用事がありまして、偶然、見かけたものですから…」


そう言いながら、助手席の窓から顔を出した。


「こんなオフィス街で、そんな偶然あるはずないでしょ!!」


怒鳴ったのは、無意識だった。


だって、そんな偶然、あるはずがないもん。


「本当に、偶然なんです。お時間大丈夫なら、少し話せませんか?」


そう言いながら開けられた助手席のドア。


「時間も話もありません。」


ハッキリと断ると、フイッと駅の方に方向転換。


そのまま、歩き出そうとした。


「お話を聞いていただいて、それでお断りをするならキッパリと諦めます。」


背後に投げかけられたその言葉に、ピタッと足が止まった。

< 28 / 69 >

この作品をシェア

pagetop