愛と欲望の螺旋(仮)
「黒崎!!」
引きつる顔。
別に、高級車のアストンマーチンに驚いたわけじゃない。
どうしてここに黒崎がいるの?
また泉希!?
100%そっちに動揺しただけ。
「この先の製薬会社に用事がありまして、偶然、見かけたものですから…」
そう言いながら、助手席の窓から顔を出した。
「こんなオフィス街で、そんな偶然あるはずないでしょ!!」
怒鳴ったのは、無意識だった。
だって、そんな偶然、あるはずがないもん。
「本当に、偶然なんです。お時間大丈夫なら、少し話せませんか?」
そう言いながら開けられた助手席のドア。
「時間も話もありません。」
ハッキリと断ると、フイッと駅の方に方向転換。
そのまま、歩き出そうとした。
「お話を聞いていただいて、それでお断りをするならキッパリと諦めます。」
背後に投げかけられたその言葉に、ピタッと足が止まった。