愛と欲望の螺旋(仮)
動揺は心臓だけじゃなくて。
私の体も硬直させて動かない。
ただ、被されたのが自分のパーカーだって分かるだけ。
「本当に申し訳なかった。」
深く、深く頭を下げた。
「……でも。」
動揺がまだ、上手く言葉を発せなくさせる。
「謝って済むことではないと思います。オレの責任です。もう少し、気を付けていれば良かったのですが。」
「それは…」
言いたいことがいっぱいあるのに、頭を下げ続けるその姿と。
幽霊のように現れた驚きで。
言いたいことがかき消されてしまっている。
「……契約解除だけは、しないで欲しい。」
スッと目の前にひざまずくと、冷たくかじかみ始めた私の両手を取った。
「そんなの…この状況で、よく言えますね!?」
かき消されたはずの言葉が、黒崎の自分勝手な言葉に一気に怒りと共に爆発した。
黒崎の手を払いのけようと両手に力を入れたのに。
ギュッと強く握りしめ
「このお詫びの条件は、キチンとさせていただきますから。」
真剣な面持ちで、ジッと私の目を見た。