龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
その時、廊下の方から猫のしっぽを踏ん付けたような『うぎゃっ!』という声がした。


わたし達は顔を見合わせた。


「この家、猫もいたっけ?」

「いないわよ」


ペロが吠えた。


『だ……誰かぁ……』


和子さん?!


悟くんが引き戸を開けて、廊下に出た。

わたしも松葉杖をつきながら戸口から顔を出した。


少し離れた先に、和子さんが腰を抜かしたように座り込んでいるのが見えた。


「和子ばあちゃん、どうした?!」


近付いた悟くんの腕に、和子さんは勢いよく縋り付いた。


「さ、さ、悟様……何やら分からぬ影が目の前を通って、あちら側にススーッと……」


和子さんが指差したのは、普段は使っていない棟へと続く廊下だ。


「落ち着いて。何だろうと悪さはしないから」

悟くん、言葉の最後に『たぶん』って小さく聞こえたのは気のせい?

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