愛を叫んで地に堕ちて〈全イラスト41枚つき恋愛ホラー〉
「街道を行った、向こうに『でうす』様とやらを祀{まつ}る南蛮寺があると言う。
 そこにある『人魚の木乃伊(ミイラ)』を盗む手伝いをしろ」

「……人魚、だと……?」

「人魚のミイラ、だ。
 南蛮寺には、死んだ人魚が何匹も居ると言うのに!
 どんなに金を積んでも、主の神父は、一匹たりとも譲らぬのだ。
 何でも人魚の肉を一口食べて八百年は生きた女がいるとか。
 不老不死の妙薬だと、出し惜しみをしているに違いない」

 晶左の声に、今度は茂吉が呆れたように鼻を鳴らした。

「なんだ、お前。
 この上、不老不死になりたいのか?」

「お前は年をとってゆくのが怖くはないか?
 死んでゆくのが、怖くはないか?
 オレは、怖いぞ!
 金で命が買えるというなら、オレは喜んで金を出す。
 愛しい真珠もお前にくれてやってもいい」

 案外切羽詰まった晶左の声は、それに、と付け加えた。

「茂吉だけで行かせて、番屋に通報されても、猿の肉を『人魚』と偽られても寝覚めが悪い。
 この前南蛮寺で見た人魚のミイラのうち、どうしても気になるものがあったしな。
 どうせ、危険を冒して一匹盗むのなら、その人魚がいい。
 オレも南蛮寺に行く」
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