ナツメ
そのわたしの耳に懐かしい足音が響いてきた。

間違いようもない。
聞き間違えるはずもない。

この足音だけを待っていたのだ。
愛しい主人の足音。


ナツメの足音だと思った。
彼がどこかにいる。

耳が心臓になったみたいにドキドキする。

鼓動が跳ねあがって、その足音以外耳は音をキャッチしなくなった。

ざわめいているはずの店内は、シンと静まり返り、音のでないテレビを見ているよう。

はやる鼓動に顔をしかめながら、その足音の主を探した。
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