ナツメ
彼はわたしをまるで愛しいものでも見るような目で見て、わたしの皿からスプーンにチャーハンを掬った。

食べさせてくれるのかと思ったけれど、それはすぐに打ち消される。

自分の口へと運んだから。

どうしてわたしの分を食べるんだろうな。

不思議に思ってナツメを見つめていると、不意にナツメの指がわたしの顎にかけられた。

なに? 

と言う間も思う間もなく、唇に柔らかいものが押しつけられる。
それがナツメの唇だとわかるまで数秒かかった。
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