ナツメ
キスだと思った。
だから反射的に従順に唇を開く。
その隙間からナツメの舌がはいってきて、すぐに引っ込んでいった。

口の中。
ねっとりとしたものが残されている。

ナツメが咀嚼したチャーハンだった。

そこで初めて今されたのはキスなんかじゃないことに気付く。

口の中に食べ物がある。
その事実に身体は拒絶を示した。

別にナツメが口にしたものが汚いとか、そういう原理ではない。

食べたくないのだ。
生きたくはないのだ。
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