ナツメ
ナツメはなにも言わない。
ただ、ごく、ごく、とそれを飲み込むのを確認している。

全てを飲み込んだところでナツメの指から解放され止まりかけていた呼吸が一気に戻ってきて、身体中に血液が巡るのを感じた。

生きているということを嫌というほど味わう。


「食えるじゃん」

ナツメが笑った。
笑って「いいこ」と、わたしの頭を撫ぜてくれて。

何故だかわからないけど涙があふれた。

ちゃんと意味を持った涙。
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