本気の恋の始め方

「しませんよ」



千野君はふっと表情を緩めて、私の頬に手を置く。

彼の指が、私の頬の感触を確かめるように、優しく頬の上を動く。



「昔の潤さんがしたことでしょう。軽蔑なんて、しません」



はっきりと宣言する彼に、不思議な感情が沸き起こった。



「――どうして」

「え?」

「どうして私のこと、そんなふうに信じちゃうの」




自分が一番、自分のこと軽蔑してるのに。

何も知らないはずの千野君が、しません、なんて断言してしまうのは危険な気がした。



「千野君、だめよ、私のこと盲目的に信じては」

「――」

「私、ずるいことしたんだから。そういう女なんだから、信じてはダメ……」



バッグから鍵を取り出してドアノブに差し込む。



< 101 / 446 >

この作品をシェア

pagetop