本気の恋の始め方
「しませんよ」
千野君はふっと表情を緩めて、私の頬に手を置く。
彼の指が、私の頬の感触を確かめるように、優しく頬の上を動く。
「昔の潤さんがしたことでしょう。軽蔑なんて、しません」
はっきりと宣言する彼に、不思議な感情が沸き起こった。
「――どうして」
「え?」
「どうして私のこと、そんなふうに信じちゃうの」
自分が一番、自分のこと軽蔑してるのに。
何も知らないはずの千野君が、しません、なんて断言してしまうのは危険な気がした。
「千野君、だめよ、私のこと盲目的に信じては」
「――」
「私、ずるいことしたんだから。そういう女なんだから、信じてはダメ……」
バッグから鍵を取り出してドアノブに差し込む。