本気の恋の始め方
「じゃあ。送ってくれて、ありがとう」
肩越しに振り返って彼を見上げると
「潤さん、待った」
千野君が慌てたように、私の手ごとドアノブをつかみ、もう一方の手でドアの私の頭の上らへんに手をついた。
「千野君……?」
ドアに手をついているから距離が近くて。真摯に私を見つめる彼の眼差しが、痛いほど胸に突き刺さる。
「軽蔑されるかもしれないって、理性でわかっていても止められない。感情と理性の間で不安定に揺れて、苦しんで。それが恋ってものじゃないですか?
他人が何を言っても、恋をしている俺はあなたを軽蔑なんかしませんよ」
千野君はそう言って、ふわっと笑う。
「引きとめてごめんなさい。だけどどうしても言っておきたかったんです。潤さんには、自分のこと否定したまま眠ってほしくないですから。おやすみなさい」