本気の恋の始め方

なんとなく、彼の左手の薬指を見てしまう。

指輪はない。


今年るうくんは二十七になる。

少し早いかもしれないけど、結婚してたっておかしくない年だ。



るうくんにそんな人はいないんだろうか、なんて考えて、こんな素敵なるうくんに、彼女がいないわけないと思いなおす。


寂しくないって言ったら嘘になる。
傷つかないって言ったら嘘になる。


だけど私にはそんな権利はない。



「塁、どうして芙蓉堂に? 就職先、違ったよね」



私の問いに、るうくんは穏やかにうなずく。



「実は去年の秋に転職してさ」

「え、芙蓉堂に!? すっごい!」

「そんなことねぇよ。たまたま運が良かっただけ。それで今度新しく始まるプロジェクトの一員に加わったんだけど――」



るうくんはそこまで言って、軽く目を細め私を真正面から見つめる。



「まさかここで潤に会えるなんて、思わなかった」



懐かしそうに聞こえるのは、気のせいじゃないんだろうか……。


塁。私のこと、怒ってないの?
軽蔑していないの?



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