本気の恋の始め方
ぽかんとする私に向かって、千野君は切なげに眉を寄せて私を見つめる。
「初日からまずい……かな。だけど帰りたくない……っていうか、離れたくない。わがままだってわかってるけど、どうしてもイヤだ」
「千野君……」
「帰ったら夢がさめてしまいそうで怖い。だから今日は潤さんの側にいたい……」
両手で私の顔を包み込んだまま、まっすぐに、きらきらした目で私を見つめる千野君。
「だめ?」
「で……でも、着替えとかないし……」
「下に、友達ん家にある。持ってくるし、俺はソファーで寝るから」
捨てられた子犬みたいな目で、続けざまにそんな風に言われたら断れない。
しかもソファーで寝るなんて言うし……。
どちらにしても、もう少し一緒にいたいと思うのは私も一緒。
「うん……」
うなずくと、千野君はパーッと表情を明るくして、大げさなくらいぎゅむっと私を抱きしめる。