本気の恋の始め方
「タクシーで帰れるから」
私はテーブルの脇に置いてあったバッグをつかんで、くるりときびすを返す。
「潤さん!」
振り返ると千野君が何だか慌てた様子で近づいてくる。
「間違ってたらごめん。もしかして潤さん……初めて、だった?」
「――そういうこと、気になるの?」
「当たり前でしょう」
「違うから。大丈夫よ、気にしないで」
私はドアを開けて部屋を出る。
「潤さんっ!!」
閉めたドアの向こうから千野君の声がしたけど、あの格好じゃ部屋からすぐには出られない。
駆け足でエレベーターに乗り込み、ホテルを出てエントランスに並んでいるタクシーに飛び乗っていた。