本気の恋の始め方
きびすを返し奥へと入っていくるうくん。
薄いブルーのワイシャツに紺色のネクタイ姿の背中は、就職活動中のるうくんを私に思い出させた。
だけど学生のころとは、全然違って見える。
私がもっと小さいころは、何も考えずにあの背中に飛び乗れたのに。今は視界に入れることすら苦しい。
「――潤?」
玄関から中へと入ってこない私を不思議に思ったのか、肩越しに振り返るるうくん。
その目は昔と変わらない。
切れ長の、眼光鋭い瞳は一見とっつきにくそうだけど、茶色い虹彩はどことなく優しく、あたたかい。
こういうふとした瞬間に、やっぱり私、るうくんがたまらなく好きだって、思う。
「おじゃましまーす!」
ことさら明るく私がうなずくのを見て、彼はふっと表情を緩め、キッチンへと行ってしまった。