本気の恋の始め方

私が短大生のころのバイトの風景。

いつも決まった時間、名門高天原の制服を身にまとった、大きな体の男の子が雑誌を立ち読みしている姿。


確かに太ってたけど、ふわふわもっちりって感じで、テディベアみたいに可愛い顔をしてて。

バイトの子たちと影で「マシュマロベアくん」って呼んでた……。





「潤さんは、お釣りを渡すときも、丁寧だった。毎日『おはよう』って言ってくれて。ひどい雨が降ったときは自分の傘を貸してくれた。そして『行ってらっしゃい、気をつけてね』って……」



今はもう、すっかりメンバーが変わっている近所のコンビニ。


私がいたときは、結構いい雰囲気で、お客様とのそういう会話が多かったことを思い出す。



「潤さんは、特別いいことしたって感覚なかったんだと思う。だから覚えてないのも当然だけど……俺にとって、潤さんは女神様みたいに見えましたよ」



なんだか懐かしそうに微笑む千野君は、やっぱりあの「マシュマロベアくん」とは重ならなかった。




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