本気の恋の始め方
「千野君……」
「憧れが恋心に変わって……気がついたらめちゃくちゃ痩せてた。いわゆる恋煩いってやつ? 両親は心配したけど、俺はチャンスだって思ったんです」
千野君はそっと私の頬に手をおいて、じっと切なげに見つめてくる。
「チャンス……?」
「そう。生まれ変わるチャンス。誰にも笑われたくない。好きなひとに好きって言いたい。以前の俺には許されなかった、そういう普通のことができるようになりたかった」
吐息まじりに、熱っぽくささやく千野君。
覆い被さるようにして、私をベッドの上に押し倒す。
「それで、こんなになったの?」
私の頭の横についた腕に手のひらを載せる。
若木の枝みたいなしっかりとした手ごたえ。
「そうです。ジムに通って、トレーナーについて……」
少し懐かしそうに千野君は微笑んだ。